瘋癲老人日記

A river runs through it.

瘋癲老人日記

ブログタイトルですが、谷崎潤一郎の晩年の作品名です。

 隠居した爺さんが、色ボケして息子の嫁に邪な気持ちを抱きます。この嫁というのがまた、なかなかのやり手でして、爺さんを手玉にとって、宝石を買わせたりします。

爺さんの妄想はドンドン膨らみ、やがて・・・、というのが、ざっくりしたストーリーなのですが、自分は一般的な解釈とは異なった意味で、印象深い小説だと思っています。

 この小説の語り手は、老人自身なのですが、身体は衰えているものの、認知能力に問題はなく、最初のころは、息子の嫁との駆け引きを愉しんでいるかのような趣さえあります。そのつもりで最後まで読み進めていくと、だんだん何処までが現実の出来事で、何処からが老人の妄想なのかよくわからない状況に、気がつきます。

ガザニカの分離脳患者の実験にもあるように、人間の自己認知能力は、大して当てにならないというのが、私の基本的立場ですが、そういった観点からも興味深い小説だと思うのです。